2017年04月26日

刻刻 1-8巻完結 堀尾省太 感想

以前割と評判が良かったので読み始めましたが、1巻途中であまり面白く感じずに読むのを止めた過去が有ります。ゴールデンゴールドを読んで面白かったので、過去作を調べたところ刻刻(著者名忘れていました。すみません)が判明し、楽天koboで1巻無料だったこともあり全巻読み直してみました。ちょいネタバレあります。

あらすじ
過去の夢を見ていた樹里がおじいちゃんに起こされる。ここ祐河家はおじいちゃん(作中はじいさん)、お母さん(パート)、お父さん(無職)、長女の樹里(主人公)、次女(シングルマザー)、長男(ニート)、次女の息子(甥)で暮らす、少しお金が足りない感じのどちらかというとちょっと残念な感じの一般家庭。

ある日長男の翼と甥の真が突然の誘拐事件に会う。身代金500万円を要求されるもその受け渡しに絶対間に合いそうにない。そんな中、じいさんが樹里とお父さんを呼び"努力"と書かれた石の置物を机に置く。そして自分の手を切って流れる血を石の上部に空いた穴に流し始める。するとどこかから白いクラゲのようなものが飛んできて、樹里たちの体に飛び込んだ。

外に出てみると時間が止まっていた。じいさんが石と血を媒介とした「止界術」で時間を止めたのだ。その静止した時の中、翼と真を取り戻すため3人は犯人たちの元へ向かうが、これは巧妙に仕組まれた罠だった。

感想(レビュー)
話が長いので、あらすじは1巻の1-1.5話ぐらいの話でやめています。

ネットで随分評判が良いのとゴールデンゴールドが面白かったので、読んでみました。本作は小説等では体験出来ない、マンガが持つ説得力を存分に発揮した作品です。「時間が止まった世界」の表現方法はいくつもあると思いますが、その画力で読者に有無を言わせない止まった世界を提示した作者の力量は素晴らしいと感じました。

また全体的には伏線の張り方と回収がうまく、(一気読みしたので)ここでそれが来るか、と思わされることもありました。

しかし一度読むのを止めた時を思い出しました。なんでか地味なんですね、この話。時間の止まった世界の中で、ごく近所を舞台としてバトルを繰り広げる。じいさんの持つ止界術の中で使える超能力は数メートルの瞬間移動。中盤樹里が能力に目覚め、止界術の中で動き回る人を強制的に追い出せるようになってからは近接バトルの要素が出てきますが、あくまでも普通の人が考えた戦い方で、決して派手な戦闘やどんでん返しのカタルシスはあまり有りません。また終盤には甥の真が神ノ離忍(カヌリニ)と呼ばれる止界術の中の管理人(見た目はゴーレムにたくさん枝が生えているようなモンスター、意志の疎通は出来ない)を操れるようになりますが、その事柄が直接的に関わってくる訳では有りません。
ストーリーもその表現もよく練られており読者の予想を覆す展開が多く楽しめはしますが、普通の人の戦いがリアル過ぎて地味になっていると思いました。

また画面が白っぽいイメージが残りますね。トーン等はしっかり使われており、書き込みもすごいのですが、表紙のデザインのためなのか、なぜか画面が白いイメージが有り、これも地味なイメージにつながっていると思います。

最後はボスキャラ助けたり(一般市民としては当然の行動と思います)、突然出てきたキャラで強引に解決する(伏線回収のためには仕方がない)など、粗というか肩すかしというか、残念な部分もありました。こうしてみると最初から最後まで抑揚の大きくない(決して小さくはないです)作品だったと思います。

本作はかなり良くできていると思いますが、読む人を選ぶ作品ですね。
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2017年04月25日

金の国 水の国 1巻完結 岩本ナオ 感想

今日は、このマンガがすごい! 2017のオンナ編第1位に輝いた金の国 水の国を読んだので、レビューしたいと思います。でもいつまでこの"オンナ"とか"オトコ"って言葉を使って分けるのでしょうか。気を付けないと余計なところからかみつかれる気がします。

あらすじ
中世アラビアと中央アジア風の隣通しのA国とB国は些細なことで戦争状態にありました。それを見かねた神様が、A国は国で一番美しい娘をB国に嫁にやり、B国は国で一番賢い若者をA国に婿にやりなさいと言いました。

しかし、A国国王は子猫のオドンチメグを嫁としてB国へ、B国族長は子犬のルクマンを婿としてA国へ送ってしまいます。

そんな中、A国の100人いる姫の中から婿の貰い手として白羽の矢が立ったのが、B国国境近くにすむサーラ姫。少しふくよかでおっとりした彼女は、怖いB国人が来るよりも子犬のルクマンが来て安心した様子。またB国は図書館長の息子で土木設計技師のナランバヤルをA国からくる姫の婿として選びました。お互い子犬の婿と子猫の嫁をもらった事になります。ナランバヤルはさらに族長に対し、戦争のせいで国策が乏しく仕事にあぶれている自分に嫁の世話をしてくれるならお祝いの酒と肉も、と要求をします。

ある日サーラが散歩のため家を出ようとすると、姉たちからB国から来た婿を見せろと迫られます。困りながらも散歩をしていると、ルクマンが駆け出し国境を越えB国まで侵入し最後は穴に落ちてしまいます。そのときちょうど通りかかったナランバヤルがルクマンを助けた縁で、サーラはナランバヤルに婿の身代わりになってくれるようお願いをします。

姫である姉たちのお茶会に出向く途中、祈祷師で右大臣のピリパッパと子供がもめている所に遭遇します。ピリパッパはA国の技術者を排除しようと、幾名も投獄し寄木細工を作らせていました。ナランバヤルは「動く道」と故障している「漕がなくても登れる川」を見かけ、ピリパッパに「漕がなくても登れる川」を修理したいので寄木細工を作っている人間を使いたいと依頼しその場を後にします。
そしてお茶会に向かう途中乗せられた王室専用の「動く箱」で上階に行き、見た街並みの美しさにナランバヤルは、ここは「金の国だ」と感嘆します。

姉たちのお茶会には俳優出身のイケメン左大臣、ムーンライトも来ていました。サーラが(偽の)夫のナランバヤルを紹介します。持ち前の口の上手さで和む場、また時計の修理を依頼されますが、その技術力で不具合の個所を説明します。その後、ナランバヤルはムーンライトと二人で食事をしますが、A国は商業大国で経済的に豊かだが水は枯渇しつつある、またB国は資源国で水資源、緑は豊かだが食事も貧しく日々暮らしていくのが大変、なので水の豊富なB国からA国に水路を引けないか、と提案します。しかしこの水路の実現にはA国とB国の和解が必須なのです。

国境を越える水路は実現するのか、夫婦のふりをしているサーラとナランバヤルの運命は。

とここまでが前半(全8話中、1-3話半)ぐらいまでのあらすじです。

感想(レビュー)
少女マンガには珍しく国家間の戦争や謀略などが背景にありますが、「神様」からA国は国で一番美しい娘をB国に嫁にやり、B国は国で一番賢い若者をA国に婿にやりなさいと言われるなど、どこかとぼけたやわらかい、おとぎ話のようなマンガでした。

けっこう面白かったです。でも、じゃぁどこが良かったの?と聞かれると少し困ってしまいます。銀の匙の面白さに似ているかもしれません(向こうは少し男の子よりのマンガですが)。一つ一つのエピソードはよくある感じなのですが、その中にサーラの優しさとナランバヤルの利発さがやわらかく表現されています。

たとえば、あらすじ以降、ひょんな事からナランバヤルの嫁(猫)の代わりとしてサーラが対応しますが、サーラはナランバヤルに奥さんがいると勘違いしてしまいます。このような(気持ちの)すれ違いは見ている方は当然もどかしく、心配になってしまいますし、作中のサーラ自身も、もやもや感たっぷりになるのが普通だと思います。しかし(なぜか)読者はそこまでもどかしくなく、純粋にサーラの心配が出来るいい意味での軽さがあり、安心して読めるところがこの本の面白さにつながっていると思いました。

また、王室専用の「動く箱」で上階に案内をしてくれたライララ(黒い頭巾をかぶっていて目しか見えない)に向かってナランバヤルがここは「金の国だ」、「キレイっすね」と語りかけますが、その前後のコマでライララがその目だけの表情を和らげるシーンが有ります。この間(ま)が何とも言えないほんわかとした気持ちにさせてくれました。このような表現の積み重ねが本書のほんわか感、やわらかい、といった評価になるのだと思います。

初出の掲載雑誌は月刊フラワーズ、高校生から30代までを対象にした少女マンガ雑誌のようですが、このお話はちょっとスレて疲れた世間を知ってしまった世代が読むほうが、久しぶりにピュアな気持ちを感じられると思われます(逆に話がキレイすぎると毒突かれる可能性もありますが)。当初前後編での構想でしたが、まったく収まりきらず、このボリュームになったそうです。通常の1.5倍ほどもある300ページ弱の単行本ですからね。

おとぎ話のような、と書きましたが、愛人は出てくる暗殺はされかける、戦争や国家の謀略が有る、など子供が読む分には注意が必要ですね。

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2017年04月24日

ギガントマキア 1巻完結 三浦建太郎(ネタバレ)レビュー

最近手持ちや新刊マンガの電子書籍化を進めています。楽天koboで1300冊ほど買いました。その購入書籍の一つが今回レビューのギガントマキアです。

ギガントマキアとはギリシャ神話オリュンポスの神々と巨人族の大戦を意味し、本作では巨大な戦闘巨人が出てきます。

あらすじ
物語は不思議少女、風炉芽(ブロメ)と風体がプロレスラー風の泥労守(デロス)が広大な砂漠の世界を旅している所から始まります。デロスがオアシスに擬態している巨大生物に捕食されそうになったところ、突如現れた、これまた巨大な空飛ぶ甲虫に乗った者たちにブロメと共に捕獲されてしまいます。

彼らのコミュニティまで連れて行かれたブロメたちですが、コロッセオのようなところで甲虫族の英雄、雄軍(オグン)との決闘を強制されます。甲虫族は甲虫の特性を持ったデミヒューマンで、硬い肌や筋力などは人間を凌駕しています。
これは決闘といいつつ死刑の意味合いの強いものですが、オグンは公平を期し、また決して負けない自信があるため、デロスに武器をも与えようとします。デロスはそれを良しとせず無手での勝負を開始します。準備のために着衣を脱ぎ始めるデロス、その姿はコロッセオの闘士を彷彿とさせるものでした。

決闘が開始されると、デロスは筋力も破壊力も上のオグンの攻撃をすべて受け切り逆転勝ちを収めます。英雄を倒したデロスとブロメは甲虫族に認められ来賓扱いとなり、甲虫族の歴史を聞くこととなります。

そんな平和もつかの間、甲虫族の神木、芽慰痾(ガイア)を奪いに中世ヨーロッパ風の人間たちが巨人を引き連れてやってきます。はたして人間たちからガイアを守れるのか。

レビュー
ギガントマキアはまさかのファンタジー格闘技マンガでした。確かにデロスの風体はプロレスラー風で、脱いだ姿も古代ローマの闘士に見えました(古代ローマじゃなく古代オリンピアのパンクラチオン風が正解ですかね)。

甲虫族オグンとのバトルは完全に格闘技マンガになっています、が心情や話の進め方は格闘技マンガとしてはごく普通で、これぞ三浦健太郎といったところを感じませんでした。

最後の戦いもブロメの力によってデロスが巨人化し、敵の巨人をプロレス技で戦う事になりますが、技や技術の詳細説明が入るわけでもなく、大きくなってプロレス技で戦うだけの感じです。

画力はさすがで、ファンタジーの言葉だけでは伝わりにくい世界観を見事に表現し、読者を納得させてくれますが、設定等はどこかから借りてきたようなものが多いような気がしました。ただ、巨人の存在は新鮮味があり(進撃の巨人が有っても)、もう少しここを広げてほしかったですね。またベルセルクとは違いそんなに悲壮感が無く、デロスが前向きな主人公として描かれていますし、意外とのんびり読める作品でした。

ブロメの出自やこれまでのデロスとの関係、新たな巨人の出現などまだまだ話は続けられそうですが、本作は余韻を残しての1巻完結となっています。
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2015年11月11日

蒼太の包丁 銀座・板前修業日記 41巻(完結)

最終巻を読みました。



掲載誌が廃刊になり、限られた中で完結まで描き切ってもらえたのは非常によかったです。


この物語はサブタイトル通り、銀座の料亭で板前修業をする主人公の蒼太の成長記と、蒼太の淡い恋愛を軸に物語が展開されます。


恋愛話は蒼太に絡む女性が幾人か出てきますが、その中でも蒼太の奉公する料亭富み久の若女将さつきは、蒼太が惚れていて、さつきもまんざらではない感じ。いつか蒼太を支える存在になってくれると思っていましたが、残念な結果に終わりました。


確かにさつきは二代目に有りがちな世間知らずでプライドが高い性格として描かれている場面が多く、打ち切りが決まってからでは作中で更生させることは出来なかったと思いますが、それでも蒼太とくっついてもらいたかった。そこに行き着く道程を読みたかったのです。しかし、40巻に渡りダメっ振りを披露してきたさつきの性格を覆す時間はありませんでした。


最終回ではさつきの理想とする効率経営によって銀座にある富み久をビルに建て替えるほどのすぐれた手腕を読者に見せつけます。その姿は決して蒼太と一緒になっても上手くいかなかったであろう事を理解させてくれました。


代わって進学校から一転料理の世界に飛び込んだ雅美ですが、助(すけ=助っ人)として来た蒼太の真摯な仕事に心を打たれ、追いかけるかたちで富み久にやってきます。それ以来蒼太の気持ち(=さつきが好き)を知っていても、決して出しゃばらず支えることを選びます。そして彼女は最終回まで蒼太を支え続けて、2人で新しいお店、富み久カムイを開くところで話は終わります。


雅美ちゃん報われてよかったよ。でもなんなんでしょうかこの一抹のモヤモヤは。ハリーポッターがハーマイオニーと一緒にならずに、ロンの妹のジニーと結婚した時のモヤモヤに似ています。最終回はベタでもいいから、お店のお嬢さんと一緒になってもらいたかったよ。


モヤっと感の残る最終巻でした。

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